地震で家具が倒れると、けがだけでなく逃げ道までふさがれます。どの家具から固定するかの決め方、効かない固定になる原因と下地の探し方、壁に穴を開けられない家での代わりの手を具体的にまとめました。
寝室のタンスを見上げて、これが倒れてきたらどうなるかと考えたことはないでしょうか。地震でけがをする原因として、倒れた家具や飛び出した物が大きな部分を占めるとされています。建物が無事でも、室内で動けなくなれば逃げ道がふさがります。
家具の固定は、道具をそろえれば休日の数時間で進められる作業です。ただし、やり方を間違えると固定したつもりで効いていないことがあります。ここでは選ぶ順番と、失敗しやすい点を中心にまとめます。
この記事でわかること
- どの家具から固定すべきかの決め方
- 固定器具の種類と、向き不向き
- 効かない固定になる原因と、下地の探し方
- 壁に穴を開けられない家での代わりの手
- 固定しても残る危険への備え
こんな人に向いています
- 非常用品はそろえたが、家の中の対策は手付かずの人
- 寝室に背の高い家具がある人
- 小さな子どもや高齢の家族と暮らしている人
- 賃貸で、壁を傷つけずに対策したい人
「倒れたら何が起きるか」で優先順位を決める
家具の大きさだけで選ぶと、本当に危ない物を見落とします。基準は三つです。
- 倒れたときに人の上に来るか(寝ている位置、座る位置)
- 倒れたときに出口や廊下をふさぐか
- 中身が飛び出して床に広がるか(ガラス、食器、本)
この基準で見ると、寝室の背の高い家具、廊下側に置いた本棚、玄関へ向かう経路の棚が上位に来ます。見た目が大きい家具より、位置の悪い家具が先です。
固定器具の種類と選び方
売られている器具には、それぞれ得手不得手があります。
- 金属の金具で家具と壁をねじ留めする方法が、効きは最も確実とされています
- ベルトや帯で結ぶ方法は、壁の傷が小さく、重い家具にも使われます
- 天井との間に突っ張る棒は、取り付けが簡単な反面、天井の強さに左右されます
- 粘着のマットを底に敷く方法は、ずれを抑える補助として使われます
- ガラス面には、割れた破片の飛散を抑えるフィルムという選択もあります
一種類に頼るより、組み合わせたほうが効きます。上側を壁に留め、底面にずれ止めを入れる形が基本の考え方です。
下地を探す——ここで成否が決まる
固定が効かない最大の原因は、石こうボードだけにねじを打ってしまうことです。板は薄く、揺れの力で簡単に抜けます。
- 壁の中の柱や桟まで、ねじを届かせるのが基本
- 柱の位置は、下地を探す道具で確認できる
- 見当たらない場合は、板の裏で開く専用の留め具を使う方法もある
- コンクリートの壁は、専用の下穴と留め具が必要になる
一度で決めようとせず、小さな穴で確かめてから本留めするほうが安全です。位置を間違えた跡は、後から補修材で埋められます。
集合住宅では、外壁側や隣との境の壁に穴を開けてよいか決まりがある場合があります。迷ったら管理会社に先に確認してください。
穴を開けられない家での代わりの手
賃貸などで壁を傷つけられない場合でも、できることは残っています。
- 背の高い家具をやめ、腰より低い家具に入れ替える
- 家具の向きを変え、倒れる方向に人の居場所を作らない
- 重い物を下の段に、軽い物を上の段へ移す
- 扉には、揺れで開かないようにする留め具を付ける
- 家具と天井のすき間を箱などで埋め、倒れる余地を減らす
配置の見直しは費用がかからず、効果が確実です。寝る位置を家具の倒れる範囲の外へ移すだけでも、危険はかなり下がります。
固定しても残る危険
家具が立っていても、中身が飛び出せばけがをします。
- 食器棚の扉が開き、ガラスや皿が散る
- 本棚から本が落ち、床が踏めなくなる
- 照明やテレビなどが落下する
- 枕元の眼鏡や靴が見つからず、動けなくなる
枕元に厚手のスリッパと明かりを置いておくと、割れた物の上を歩かずに避難できます。
作業の進め方と安全
一日で全部やろうとせず、寝室から始めて週末ごとに広げるのが続けやすい形です。作業のときは家具の中身を先に出して軽くし、二人で支えながら動かします。一人で背の高い家具を傾けるのは危険です。電動の道具を使う場合は、壁の中の配線や配管の位置に注意してください。
一年に一度の点検を習慣に
ねじは揺れや乾燥でゆるみます。ベルトも時間が経つと伸びます。模様替えをしたあとは、固定が外れたままになりがちです。防災の日や年末の掃除のときに、手で軽く押して動かないかを確かめる習慣にしておくと安心です。
よくある質問
Q. 突っ張る棒だけで十分でしょうか
手軽ですが、それだけに頼るのは心もとない方法とされています。天井側の下地が弱いと、棒ごと押し上げてしまうことがあります。底面のずれ止めと組み合わせる、あるいは壁への固定を足すほうが確実です。
Q. 家具の中身はどう入れ替えればよいですか
重い物を下、軽い物を上が原則です。重心が下がると倒れにくくなり、落ちた場合の危険も小さくなります。ガラスや陶器は、できるだけ腰より低い位置にまとめてください。
Q. テレビや電子レンジのような家電も固定が必要ですか
落ちれば十分に危険です。粘着のマットやベルトで台に留める方法があります。背の高い台に載せている場合は、台そのものの固定も合わせて考えてください。
Q. どこから手を付けるか迷っています
寝室です。眠っている間は身を守る動きが取れず、避難も遅れます。寝る場所の周りに倒れてくる物がない状態をつくるのが、最初の一歩になります。
まとめ
- 家具の大きさではなく、倒れたときに人や出口にかかるかで順番を決める
- 固定は下地に届かせることが前提で、金具とずれ止めの組み合わせが効く
- 穴を開けられない家でも、配置と中身の入れ替えで危険は大きく下げられる